それぞれの、駐車場での

先日私の両親と私と2歳の息子で初めて外出をした。コロナや距離の問題がありなかなか揃って出かけることが難しかったのだが、皆の予定も合いせっかくなのでということで、父の運転で大宮の方まで出かけたのであった。

目的地まで少々迷いながらも到着し、駅の最寄りにあったコインパーキングに車を駐車した。やっと着いたねと言いながら母が車から降り私と息子が続いて下りると、母が抑えめな声で「やだ、こんなもの誰が落とすんだか」と言った。母の向けられた視線の方を見てみたところ破れたコンドームのパッケージと縛られたその中身が駐車場に落ちており私は初めて見るその落し物にギョッとした。母はそれを見て誰が落とすのか?との感想だったが私は使う配慮はあるのに持ち帰る配慮はないんだなという感想で、しかしそれを母になんとなく言う気にもなれず「あー、こんなの落ちてる、気持ち悪い」と当たり障りない言葉をやや弾んだ声で呟き目的地まで歩き始めた。

用事が済み駐車場に戻ろうとしたときに「ちょっとコンビニに行ってくる」と言って父だけコンビニに向かい我々は駅近くの自動販売機で待機をし、ついでにリンゴのジュースを買った。ジュースを買った私に「ねぇセブンティーンアイスが売ってて食べようか迷ってるんだ。このグレープのアイス結構美味しいから」と母が言ったので「買ったら?私はいらないかなぁ」と答えた。母はどうしようかとアイスの自動販売機をしばらく眺めた後に「やっぱりいいや...」と言ってアイスの購入を断念していた。それからその場でしばらく父を待ったが、父はなかなか現れず先に駐車場に戻ったのかもねと言いながら駐車場に向かった。

駐車場に着くと父はまだ戻っておらず車の鍵はかかったままだった。まだ戻ってなかったねと言いながら3人が駐車場の日陰で待っていると茶色い紙袋を抱えた父が戻ってきた。コンビニに行って茶色い紙袋を抱えたことがなかったので一体何が入っているのかと覗き込むと中にはハロハロが3つとポテトが入っていた。「ハロハロだ!」私はハロハロという名称を声高らかに久しぶりに発し、母は「アイス、買わなくてよかった」と言った。

父の買ってきたハロハロに沸き立つ我々が車に乗り込むと、母がやや小さい声で「さっきのあれ、なくなってた」と私に報告をしてくれた。さっきのアレとは例のコンドームで、気分がハロハロの私はすっかり使用済みのコンドームのことを忘れていたのだが、母が中学生のようにあれの行方を教えてくれたことに驚いた。私の中で母は神経質で真面目という認識が強いのだが、あの微妙な物を無視をせずに割とポップに話してくれたことに驚き、35年近く親子であってもまだまだ私の知らない母の一面が結構あるのかもしれないし、私はちゃんと母のことが見えていたのだろうかと少しハッとする思いをしたのだった。

それから父の買ってきたハロハロを発車前の車内で食べた。そういえば我が家では月1か、それよりも短い間隔で父がミニストップでハロハロかソフトクリームを買ってきて家族5人でうまいうまいと食べていたな、とすっかり忘れていた記憶を懐かしく思い返した。利用していた近所のミニストップが潰れてしまってからはその行事も途絶えてしまい久しくハロハロを食べない人生を送っていた私は、約15年ぶりに食べるハロハロを特別に美味しく感じていた。「そういえば○○ちゃん(私の妹)と家の近くに欲しいコンビニNo. 1はミニストップだよねって話したんだよね」と母はゴロゴロ入ったハロハロのマンゴーに喜びながらそう言った。

またこうして久しぶりに家族とハロハロを食べた駐車場での時間は、主要の用事よりも思い出深いものとなりハロハロが食べられてよかったねと言い合った。ハロハロを食べ終わった父が「じゃあ行くか」と言って車を出発させ、ハロハロを食べ終わった後部座席の私たちはポテトを食べ始めた。何もかもこんなに美味しいのにミニストップは何故ボコボコ潰れていってしまうのか?と母と会話しながら私はあんなゴミ誰が落とすんだかとひっそり考えていた。