「あぁ......さみしい....」
日本人のフロス使用率を上げようとするブログ『FLOSS OR DIE』を立ち上げて半年くらいが過ぎたころから私はこのような感情を抱くようになった。
この時、私のまわりにはブログを書いている人はおらず、モクモクと一人でフロスブログを書く日々を過ごしていた。仲間に相談したり活動報告をすることができず、さみしさを感じるようになった。
うさぎ年の寂しがり屋なわたしは、サロンを運営するブロガーのセミナーに5000円の参加費を払い仲間を探しに行った日もあった。そのセミナーでは2人と知り合ったが、どちらもブログはやっておらず、結局わたしは孤独だった。
そしてわたしは仲間のいない孤独のほかにもう一つの悩みを抱えるようになった。
フロス以外のことも書きたい...
フロスの情報発信を売りにしているブログなのに、フロス縛りで書いていることを窮屈に感じストレスになってしまったのだ。
もっと違ったジャンルのことも書きたいし、もっと自由に書きたい!という思いが沸々とわくようになった。
そんな悶々とした気持ちで過ごしていたある日。こんな記事を見つけたのだ。
【東京猫スポット情報】弁当を狙いに来る猫のいる公園
たしかツイッターでたまたま見つけた記事だったのだが、公園に猫が弁当を狙いにくるよという内容の記事だった。
猫好きのわたしはこの記事を読んで、あー楽しかったという気持ちになった。
あー楽しかったという余韻を感じながらさらに記事をスクロールしていくと、
【2017】ハイエナ 春の動物パンまつり
今度は可愛い動物のパンコレクションの記事を発見した。ただ動物パンのコレクションを発表する。それだけだった。
.....。
人がこんなにフロス縛りでストレスを感じているというのに、このサイトの自由なこと。
そんなところにわたしの心は惹かれていったのだった。
そう、そのサイトが今回の主役「ハイエナズクラブ」である。
わたしはブログ運営の本を読んだり、ブロガーからの情報などを通して、
「ブログは人が困っている内容、人の役立つ情報を発信すると良い。」
ということを学んできた。
ハイエナズクラブはどうだろうか。
「人が見向きもしないようなネット上の残飯を拾ってネタにする。」
わたしが学んできたことの真逆をこのサイトはスローガンに掲げていたのだ。
なにこのサイト?やっていけるの?
しかしこのサイトにはタダ働きにもかかわらず多くのライターが所属し、5年以上も運営が続いているようであった。
さらに、
「あ!思い出野郎Aチームの人も所属してる。」
兼ねてからファンであった思い出野郎Aチーム。そのメンバーの1人が在籍していることが判明した。
ちょっと気になる存在『ハイエナズクラブ。』
その日わたしはハイエナズクラブをツイッターでフォローし、ハイエナズクラブの動向を見守ることにした。
ツイッターで流れてくるハイエナズクラブの情報は過去記事の紹介が多く、わたしはちょこちょこハイエナズクラブの過去記事に目を通すようになった。
そんなある日。例の如くせっせとハイエナズクラブの過去記事チェックに励んでいると、ある記事が目に止まった。
【比較検証】鳥貴族っぽい居酒屋を1日で4店ハシゴしてきた!
どんな記事かというと、ハイエナズメンバーが鳥貴族っぽい居酒屋に行って、焼き鳥とか釜飯を食べ、メンバー各々が何か言って終わる。という記事なのだが、この記事を読んで私はさらにハイエナズクラブの虜になったのだった。
何が良かったかと言うと、ブロガー仲間で焼き鳥を食べて酒を飲んでブツブツ言って記事にできるという点だった。こんな良いことはない!
文章もかけるし、お酒も飲めるし仲間もいる!
そして、
「わたしもハイエナズクラブに入って仲間と鳥貴族に行って、食べて飲んで記事が書きたい!!」
という大志を抱くようになったのだった。
孤独死寸前だったわたしに一筋の光が差し込んだ瞬間である。
さてどうやってハイエナズクラブに加入できるのだろう。
ハイエナ募集というページを見ると、ネタの募集だけでメンバーは募集していないようだった。
じゃあここにいる人たちはどうしてメンバーになったのだろう。
わたしは考えた。
思い出野郎の人がメンバーってことは...
思い出野郎Aチーム→バンド→ライブ→クラブ
全員クラブ繋がりのお仲間...?
雰囲気的に高円寺あたりのクラブだろうか。
わたしは自分を責めた。どうして若い頃にもっと高円寺のクラブに出入りしておかなかったのだろうと。
まずは高円寺のクラブに行ってみようか。でも確実にメンバーに会えるかわからないし...
高円寺のクラブでハイエナズクラブのメンバーを見つける案は一先ずボツにした。
次に、バンドをやっている友人を介して思い出野郎Aチームの人にたどり着けないだろうかと考えた。
CBSというかっこいいバンドをやってる知人に思い出野郎と接点はあるのか?と聞いてみたところ、一部のメンバーと一緒にイベントに出たことはあるよ!との返事。
しかし、とりわけ行き来をしているわけではなさそうだったので、ハイエナズクラブに入りたいから紹介してほしいという図々しいお願いはしなかった。
ハイエナズクラブ加入大作戦はこれ以上良い案が出ず、わたしは行き詰まった。
しかし。2017年の11月5日。転機が起きたのだった。
わたしは思い出野郎AチームやVIDEO TAPE MUSIC のライブを堪能し、1人でも来てよかった〜とウキウキとしていた。
ちょっと疲れたから休憩しようと会場外に出て、ビールを買って物販コーナに立ち寄った。そのときは在日ファンクのライブ中だったので物販にいた客はわたしだけであった。
物販コーナを物色していると、思い出野郎AチームのロングスリーブTシャツが販売されていた。
ちょうどこのくらいの薄さの長袖が欲しかったんだよね。
背中に猫の絵がプリントされている長袖を広げて、買おうかなーどうしようかなーと1人で悩んでいた、
その時だった。
「お目が高い!」
...お目が高い?物販にはわたししかいないから、わたしのこと言ってる?猫のプリントがされた長袖から目を離し、声がした左の方へと顔を向けた。
すると、ハイネケンを片手に持ったコッカースパニエルのような髪型の男がニヤニヤして立っていたのだった。
「それ、俺がデザインしたんです。」
!!!!
なんと。
声の主は、思い出野郎Aチームそしてハイエナズクラブのメンバーであるあのお方だった。
よっしゃ!当てた!引き当てた!ツイテるぞ!引き寄せの法則!!
突如目の前に現れたハピネスにわたしの胸は高鳴った。やったぞ。夢の鳥貴族まであと一歩!
だが待てさとみこんこんよ!このチャンスは逃してはいけない。慎重に、慎重にいけよ!
この男を逃してたまるかという緊張感から顔が引きつってしまうわたしをよそに、コッカースパニエルみたいな髪型の男は相変わらずニヤニヤと佇んでいた。
まずわたしは、彼に猫の長袖はSサイズがいいか、Mサイズがいいか質問をし、進められたサイズを買った。
それから記念撮影を依頼。あくまでも普通のファンを装った。
そしてお互いビールを持っていたこともあり乾杯をした。順調じゃないかさとみこんこん。
ちょっと場が和んだところで、いよいよもって、わたしは大切なあの話を男に切り出すことにした。
「あの、ハイエナズクラブに入るにはどうしたらいいんですか?」
ニヤニヤして細くなっている男の目が一瞬だけ大きくなった気がした。
そして
くっくっくっ。
と男は笑った。
会った時から変わらずニヤニヤしたその顔は何かに似ているが、何に似ているのかわからなかった。
「何かブログやってるんですか?」
「はい。フロスのブログです。」
と真剣に答えるわたしをよそに再び
くっくっくっ。
と今度は頭を下げて男は笑った。
そして、下がっていた頭をひょいと上げてわたしの目を見て男はこう言ったのだった。
「あのー。ハイエナズクラブはスカウト制なんですわ。」
スカウト制....
高円寺のクラブのお仲間ではないのか。スカウト制ってことは...ハイエナズメンバーは選ばれし者の集まり.....
この時の心境を解説しますと、
登頂まであと一歩か?というところで、コッカースパニエルに山から突き落とされて遭難。のちに孤独死。
といった具合でしょうか。
放心状態になったわたしに男が、フロスのブログどれ?とポケットからiPhoneを取り出してブログを確認しようとしてくれた。
ラッキーチャンス到来!
FLOSS OR DIEですよ!と発言しようとした瞬間、
「あ、電波ないや。ごめん。今度見ますね!」
いいや、絶対見ないね。絶対見ない!と心の中で叫びつつも、ファンでもある思い出野郎さんにはそんなことも言えず、
「あ...はい。ありがとうございました。では失礼します。」
と言ってわたしはその場から立ち去った。
そしてビールを持って外に出て夜風に吹かれた。
終わった...。
人生そんな上手くいくわけないよなぁ。。
でもわたし結構ツイテたよなぁ。。スカウト制ってわかっただけでも進歩だよなぁ。。
ていうかあの顔何かに似てるなぁ。なんだろう。なんだろう。
なんだろう....
あ、ニャンちゅうだ。
翌日、ツイッターを見ていると
「昨日のカクバリズムで僕の服がなくなりました。この服に見覚えがある人は連絡を。」
というような内容のツイートが流れてきた。ツイートの主はニャンちゅうだった。
さらに数日後、私、服を脱いでいるところを見ました!というような内容のDMが届いたというニャンちゅうのツイートも見たが、その後の服の真相は謎である。
少々脱線してしまったが、話はもどって、カクバリズムの翌日。
わたしはニャンちゅうにFLOSS OR DIEのURLをつけてDMを送ったのだった。
なんとしてもニャンちゅうにFLOSS OR DIEを見せようとしたのだ。なんとかハイエナズクラブに加入しようという最期の賭けでもあった。
わたしは執念深い女。誰になんと言われても構わないキモい女!
全ては鳥貴族のために!!!
するとニャンちゅうから返信がきた。
「やばいっすね。フロスを偏愛しすぎている。とりあえずみんなにブログ見せたりしてみます◎」
絶対見せないね!絶対見せない!
職場の誰もいないところでわたしは叫んだ。
終わった....。
これで本当に終わった。けどしょうがないよ。やれるだけのことはやったさ。悔いはない。あっぱれだよさとみこんこん。
予想通り当日も、翌日も、さらに次の日も、ニャンちゅう及びハイエナズクラブから連絡が来ることはなかった。
3日たって連絡がこないということは、そういうことよねとわたしは潔くハイエナズクラブ加入の思いを諦めることにしたのだった。
その翌日。わたしはその日も元気にツイッターをしていた。
すると、また気になるサイトを見つけたのだった。
その名は「素人の研究社」だった。
なにこのアイコン。孔雀?
「夏休み自由研究レベルをスローガンとして、素人の知識と行動力で気になったものを記録、調査、研究し、ドカンと不定期に発表することが主な活動目的です。」
というのが活動内容のようだ。
どんなことを調べてるのかサイトを覗くと、
・家の外に置かれた水槽のメダカが生きているか死んでいるかの調査
・店番をするぬいぐるみの調査
・家のドアや階段を塞いでいる植木鉢の観察
等であった。
こんなサイトもあるんだなぁ。面白いな!
わたしは素人の研究社をツイッターでフォローした。そしてツイートをスクロールした。すると、
「素人の研究社は海外で頑張っている明るい仲間たちを探しています 経験は不問、従順な方優遇します。」
メンバーを募集していた!
日本在住だけどメンバーになれるだろうか。
わたしは素人の研究社にメンバーに入りたい旨を綴ってDMで送ってみた。
ドキドキしながら待っていると孔雀のアイコンから返信がきた!
「ありがとうございます。あなたがハイエナズクラブにもご興味とは伺っております。
素人の研究社は現在オープンですが、ハイエナズクラブを先に連絡されておられると思いますのでそちらがNGだった場合にこちらは検討させていただけますでしょうか。
僕はハイエナズクラブ主催者ですが運営関係は別の方に任せているので。」
!!!!!
や、やってしまった....。
驚きと狼狽で呼吸がしにくい。
まず驚くべきことは、ニャンちゅうがちゃんと報告してくれていたという事実。
そして...
さらに驚くべきことは今やりとりしている孔雀が憧れのハイエナズクラブの長であるという事実....
わたしの最大のミスは、ファンと公言しているにもかかわらず、ハイエナズクラブの設立者を誰だか知らなかったということ....
ばかだ...なにをやっているんだわたしは!
これじゃまるでヤリマンみたいではないか!
どうしよう...
とにかく素直に思いを伝えよう。
わたしはまさかニャンちゅうが報告してくれたと思わなかったということ、3日間連絡が来なかったからハイエナズクラブ加入は諦めていたこと、今非常に気まづい気持ちでいること、けれども気合いは入っています!
ということを返信した。
すると数時間後。
「わかりました。それだけ気合が入っているなら問題ないでしょう。素人の研究社でよければ仲間になってください。」
ヤッターーーー!!
わたしは返信を見るや否や両手を上げて飛び跳ねた!
嬉しい。すごく嬉しい。
せっかく入れてもらえたのだから頑張ろう!
ハイエナズクラブには入らなかったけど...素人の研究社でがんばって、そしてみんなで鳥貴族に行こう!
やる気で満ちたわたしに、孔雀の社長からの返信が届いた。
「僕はアメリカに住んでいて時差が14時間あるので、変な時間に返信をすることもあるかもしれませんがご了承ください。」
!!!!
あ、アメリカ.....
社長、鳥貴族は?
こうして本当はハイエナズクラブに入りたかったわたしは今現在、素人の研究社というブラック企業で働いている。
朝から晩までの隙間時間の中で、現場に出向いての調査、そして執筆活動に追われる毎日である。
調査に夢中になりすぎて気づいたら港にいた日もあった。夢の中で調査に励むこともあった。道路を歩くと何か面白いものないかなと挙動不審になりながら毎日歩くようになった。
軽いノイローゼになりつつも、せっせと今日も調査に励む毎日である。
過酷な労働環境のおかげでプライベートはほぼ記事作成のために費やす形になってしまったが、それでもわたしは社に入ってよかったと思っている。
その訳は孤独じゃないという点が大きい。
初めて書いた調査、「自転車の備え付けタオルに関するスタイルと考察」の記事を提出した際に、一生懸命に書いた記事が訂正されて真っ赤になって戻ってきたことがあった。
赤ペン先生かと思われるくらいに丁寧に書き込んで訂正された自分の記事を見た時に、わたしはここに入ってよかったなぁと心底思ったのであった。誰かにご指導していただける環境、次はもっとこうしようと課題を見つけることができる環境というのはありがたいものである。
ということで孤独と戦う悩めるブロガーは、是非とも、寺子屋素人の研究社においで下さい。鳥貴族に行ってくれる仲間も募集中です!
そして最後に1つ言わせていただきたい。
ニャンちゅうと呼ばせていただいた思い出野郎Aチームの増田さん。
彼が、なくなってしまった服をぬぐ瞬間を見ていたのはわたしである。