労働を考える

10年間正社員として頑張ってきた職場は育児休業あけにはパートタイマーとして復帰することが決まった。本当は正社員のまま時短勤務を希望していたのだが、職場はそれに応じることが難しく週に数回のパート勤務となった。そんな矢先コロナウィルスが世界的に大流行しまともに働くことができない環境は世の中にも広まった。

夫は在宅勤務になった。うさぎ小屋のような小さな家でうさぎのように身を寄せ合って暮らしている我が家族。そんな我が家に夫が仕事をするようなスペースはなかった。デスクと椅子が必要という夫にさてどこにそんな置き場なんてありますか?と反論する妻私。子供は掴まり立ちやハイハイに勤しむ今日この頃。なるべく物を最小限にし事故防止の環境を整えてあげたいと思っている。が、夫がしっかり仕事に取り組めないのも困ってしまう。話し合いの結果、座椅子を購入しデスクは食事用のちゃぶ台でなんとか頑張ってもらうことに。家の家具をテトリスのように移動し、ベット横のスペース2.5畳程度に座椅子とちゃぶ台を敷き詰めワークスペースを確保。こうして我が家にもなんとかワークスペースを設けることができコロナウィルスと社会に立ち向かう環境を整えることに成功した。ワークスペースがキッズスペースの4分の1くらいしかないが、漫喫みたいでいい感じである。朝のテレビでパックンがニューヨークでは在宅ワークをするスペースがないことが問題、でも皆工夫を凝らして頑張っている。と言った後に頑張っているニューヨーカーの様子をVTRと共に紹介していた。アイロン台でデスクワーク、トイレでデスクワーク、風呂場でデスクワーク。みんな工夫して頑張っているとパックンは笑顔で言っていた。うちもニューヨーカーと一緒だね。私もパックンに続いて笑顔を見せるが、夫は笑ってはいなかった。

 パートタイマーとなった私は、働くことについて考えることが増えた。別に好きでなったわけでもない歯科衛生士の仕事をこのまま続けていくべきなのだろうか。辞めてディスクユニオンで働くことを考えついた時にはすごく楽しい気持ちになり「ディスクユニオンで働くの、いいかも〜」とディスクユニオンで働く自分を想像してみた日も多いにあった。が、私は曲名や歌手名を覚えるのがすこぶる苦手である。私の好きなアーティストMndsgnは何回覚えても読み方がわからなくなり曲のタイトルは1曲も覚えていない。ヨ・ラ・テンゴは何回覚えてもヨ・コランデが邪魔をしてくるし、バーバルをバーバラだと思っていてバカにされた。そんな私に果たして店員は務まるのだろうか。「すみません、〇〇の〇〇ってどこにありますか?」「すみません、ちょっとよくわからないんで歌ってもらっていいですか?」たぶん客とこのやりとりを100万回すると思う。そんな店員を客とディスクユニオンは温かい目で見守ってくれるのだろうか。

私は音楽が好きだ。毎日音楽を聴いている。でも詳しくはないし知っていても曲名がわかならない。これまで音楽が好きだと言った相手に、これも知らないの?あれも知らないの?と言われ呆れられきた。知らないよだって曲名が覚えられないんだから。でもそもそも音楽の好きは知識の量ではかるものなのだろうか。私は私で音楽と向き合って好きだと思ってんだからほっておいてよ。と思っていたが果たしてディスクユニオンでこれは通じるのだろうか。いやあんた曲名くらいちゃんと覚えなさいよと言われて徹夜をして曲名を覚えなければいけなくなった時に、私は音楽を好きでいられるのだろうか。ディスクユニオンで働くことが嫌にならないだろうか。じゃあ今まで通り私が向き合ってきた音楽を糧に就労したときに、私は客に何が提供できるのだろう。そう考えると、私がディスクユニオンで働くことは今まで通り心の中の希望としてしまっておいた方がいいのではないか、という結論に至った。たぶん。わからないけど。

それと今回のコロナウィルスの影響を受けて、やっぱり私もきちんと収入を得られるようにしておくべきだと実感している。生活を守るためにはお金が必要で、夫の稼ぎが少なくなったときに自分も頑張って家計に貢献できる状態は作っておきたい。それにもし離婚することになったときは親権は獲得したいので、経済力がやっぱり私には必要なのである。そうなるとでディスクユニオンのバイトでは不安だし、歯科衛生の仕事で生計を立てられるよう努力することが自分にはあっているのではないだろうか。歯科衛生士は好きな仕事ではないが、私は白い歯が好きだし、歯のマンガも好きだし、そうやって落とし所を見出して、心地よい生活を維持するために労働することが私にはお似合いなのかもしれない。