好きな食べ物は何かと尋ねられて一度たりともカレーと答えたことはないが、今日はカレーだよと言われたらなんか嬉しかったり、時々無性に食べたくなったり、晩御飯のメニューが全く浮かばないときに「そうだカレーにしよう」となんとなくカレーにしてみたりと、私の人生においてカレーとは好印象で頼もしい食べ物のように思う。
ある日、おぎやはぎのメガネびいきを聴きながら作業をしているとたまたまカレーの話題になった。別にテーマだった訳でもなく突然カレーの話になったのだが、おぎやはぎは結構長いことカレーについて語っていた。その内容はというと、やはぎの嫁が作ったカレーがまぁ美味いとか小木が2日目のカレーには菌がいっぱいだとうるさいなど結構どうでも良い話だったのに何故か妙に聞き入ってしまった。
そんなおぎやはぎのたわいもないカレー話を聴いて思い出したのは、幼い頃の我が家のカレー事情であった。我が家は毎週土曜日はカレーの日であった。私には3つずつ離れた姉と妹がおり、三姉妹は親の方針で全員スイミングスクールに通わされていた。そのスイミングスクールというのが土曜の午後からだったのだが、子供達がスイミングスクールに行くことで母もなにかと忙しかったのか、その日の晩御飯は簡単にできるカレーをよく作っていた。そしていつの日からか「土曜の夜はカレー」が定番化していった。毎週カレーでも文句を言う者などおらず、むしろ今日はカレーだと皆喜んでいたように思う。ひと泳ぎして帰って食べるカレーは美味しかった。毎週同じカレーだけど飽きることはなかった。次の日の朝がカレーでも嬉しかった。次の日の昼がカレーうどんになっていると小躍りした。側からみればめちゃくちゃカレー好きなのに、けれどもカレーが一番好きと言ったことはなかった。なんならセカンドとも思ったことがないし、サードでもない。トップテンに入ってるかも怪しい。だけどカレーだよと言われれば今日はカレーかぁ♡なんて嬉しくなるのだからカレーは大したもんである。
そのほか三姉妹が幼い時期は甘口と辛口のカレーを作るために2つの鍋にカレーを分けて作っていたけれど、ある時を境に辛口だけの鍋になったよなとか、親戚のおばさんの家に行った時に晩御飯に出てきたカレーのスプーンが何故かお冷のカップの中に浸されて登場し衝撃を受けてしばらく真似したよなとか、あの時の彼に初めて作った手料理はカレーでしたなどとカレーとの思い出は結構多く、カレーは私の人生にそっと寄り添っている食べ物だと気がついたのであった。
だからこそ人の家のカレー事情も気になるのであろうか。おぎやはぎのカレー話が気になったのも、正月に必ずカレーを作るタモリさんの話も、アメリカに住むイチローが毎朝カレーを食べていることも、友人が盛り付けたご飯とルーをピッタリ食べきるまで食べるのを絶対にやめない話も(皿にご飯だけ残ってしまったらルーを足しに鍋に向かうそう。逆も然り)やけに記憶に残っている。そして結構多くの人がカレーエピソードを持っているのは、カレーがめちゃめちゃ好きというより、カレーに愛着があるからなのだろうか...うーんよくわからないけど今日はカレーにしよう。