ご近所付き合い

茨城に引越しをしてから半年以上が経ち、この土地に引越しをして初めて外国人の知り合いができた。マンションで知り合いになったインド人家族のことは過去のブログにも書いたのだが、その後公園で知り合ったエジプト人家族や国際結婚をしたインド人と日本人の家族とも知り合い息子に様々な国のお友達が増えていった。それは私にとって喜ばしいことで、このまま見た目や言語で萎縮することなく多様な価値観をいろんなお友達と共有してくれるようになってほしいと願っている。国際結婚をしたインド人のお父さんが「僕たちの子供達はきっと色々なことを英語で語り合うようになると思うよ」と日本語でペラペラ言っていたのだが、私もそうであってほしいとぼんやり思っていたことを知り合って間もないインドのお父さんが言ってくれたことで、近い未来きっと息子達はそうなるんだろうなと思った。私自身もそうでありたいのだが、語るほどの英語力もないしここ最近は自分の意見も日本語できちんと言えないことをひしひしと感じていたので頑張らなければと思っている。

嬉しいことに先日同じマンションのインド人の自宅にお邪魔させてもらった。実家からトマトがたくさん届いたので息子と自宅に届けると「ありがとう!どうぞ入って」と笑顔で出迎えてくれたのだ。最初まさか家にお邪魔することになると思わず「え、今?今?」と玄関前でオロオロと狼狽えてしまったのだが「そうだよどうぞどうぞ」とインドのお母さんが優しく手をひき中に案内してくれたので遠慮なくお邪魔することにした。玄関で靴を脱いでいるとその家の娘が家の中を「イエーイ」と言いながら走り周っていた。

「ちょっと散らかっているけど座って」インドのお母さんは忙しそうに私を案内してくれたのでそのまま床に腰を下ろすと「ダメだよソファーに座ってよ」とソファーに座るように指示をした後に台所に消えていった。私は床の方が落ち着くからそれでよかったのに遠慮してると思われたのだろうかなどと思い落ち着きなくソワソワしていると、同じように肌色の違うお客がきてソワソワするインドの女の子がアナと雪の嬢王の塗り絵やiPadでお気に入りのyoutubeなどを見せてくれた。1人だけ堂々としていたのはうちの息子で、彼は熱心にリモコンを探って遊んでいた。そんなふうにして各々過ごしているとインドのお母さんが温かい飲み物とリッツをお皿に並べて持ってきてくれたのだ。湯気のたつ温かい飲み物を受け取り「いただきますって英語でなんて言うんだっけ?」とボソボソ言いながら飲み物を口にした。その飲み物はここ最近飲んだ水分で一番美味しかった。「これはチャイ?」と聞くとそうだよとのこと。今まで飲んだチャイの中で一番美味しい。きっとインドの専門店とかで買っているのだろうと思いどこで売っているのかと聞くと「リプトンだよ」とよく知る名前の茶葉で作っていて驚いたのだった。作り方を聞いたところリプトンの紅茶を煮出して牛乳と砂糖を少し入れて作ったとのこと。このチャイにスパイスを足すとマサラチャイになるそうだ。

「チャイにリッツを浸して食べると美味しいよ」と言われ、言われるままリッツをチャイに浸して食べてみたところ口の中でインドが広がった。チャイのまろやかさと甘さの中にリッツの塩っぱさが相まって最高だった。小さい頃から家にあってもあまり嬉しくなかったリッツ、大人になって自由にお菓子が買えるようになっても一度も手に取ることのなかったリッツをインドのお母さんは「スーパーで1番よく買う食べ物」と評価していた。私はいささかリッツのことを見くびっていたのかもしれないと思っていると女の子が私の目の前に置かれたリッツの皿を奪ってボリボリ食べ始めた。

それから我々は日常生活の話やインド料理の話をしながらチャイをすすり、1時間ほどお邪魔して自宅に帰ってきた。お土産にインドのスパイス、カルダモンをもらったのだが、せっかくなので家にあるものでカルダモンを使ったサラダを作ってみることにした。エビとさいの目切りにしたアボカドとトマトを潰したカルダモンにレモン汁と白ワインを入れてマヨネーズであえて塩コショウをただふっただけのサラダなのだが、食べてみると口の中で異国の味わいがした。「インドっぽいね」「インドっぽいよね」インドにはまだいったことのない我々夫婦をインドのお母さんがくれたカルダモンの実が瞬間的にインドの地へと導いてくれたのだった。

地元で採れたトマトと交換にインドから持ってきたというカルダモンをもらいわらしべ長者のような出来事が起きたのだが、私の今回の一番の発見は近所のスーパーでリプトンとリッツを買ってくれば頻繁にインドに行けるということをインドのお母さんに教えてもらったということである。