緑の帽子の行方

わたしは人の影響を非常に受けやすい人間です。

顕著なのがファッション。
ようやっとここ数年かけて、自分の好きな服を認識できるようになったので、それほど服装が変化することはなくなったのですが、
それまでは服を選ぶ基準が「人」や「環境」だったため、一緒に遊ぶ女友達や意中の人の影響によって服装が変化していました。
年に数回会う友人はわたしの服装を見て、わたしのその時の心境や状況を読み取ることができるほどでした。

ある日のわたしは、SLYというギャルブランドで働く美人な友人とよく一緒にいたため、これを着ればわたしも美人になれると思ってSLYの服ばかりを着ていました。口紅はmacのピンクベージュ一択です。

20歳の頃は周りの友人がB系ばかりだったので、成人式はコーンロウに紫の着物で出席していました。肌は黒ければ黒いほど美しいとされ、LB-03という基本ゴールド×黒 もしくは ゴールド×白 の色を基調としたブランドを好んで着ていました。この時代に1番嬉しかったことは411(フォーダブ・ワンと読みます)というウェッサイな感じの殿方が出ておられる雑誌の水着スナップコーナーに出たことでしょうか。

その後金持ちと結婚するのが女の幸せ時代に突入し、黒い女より白い女を目指すようになります。
小倉優子を崇拝し、髪は内巻き!バックはイブサンローラン!財布はプラダよ!みたいな時代に突入。愛読するのは美人百花。ご馳走してくれない男って。はぁ?みたいな感じでやっておりました。この時使っていたイブサンローランはトレジャーファクトリーで二万で買い取ってもらいました。

その後迷走し、ニーハイソックスをやたら履いて絶対領域を作りたい時代が到来しますが、この時代は安土桃山時代くらい短いものでした。

こんな具合で様々な時代を歩んできた私ですが、今回割と長くやっておりました、B系時代の頃のはなしを綴りたいと思います。
その当時付き合っている彼氏はダンサーでした。
彼はアニメーションダンスを嗜んでいる方でした。
わたしはというと、控えめなB系くらいで生活しておりました。ヒョウ柄のピタッとした服がお気に入りでLB-03のゴールド×黒を基調とした天狗並みに高いヒールを好んで履いていたように記憶しております。
そんなわたしの誕生日だかクリスマスだか忘れてしまいましたが、ダンサーの彼から贈り物をいただきました。

「もっと君にはB系を目指してほしい。」
「こういうのを似合う子になってほしい。」

そう言ってもらったプレゼントは、
緑色のカンゴールのハットでした。
B系を目指しているわたしにとって、とても嬉しいプレゼントでした。

しかしB系を目指しているわたしが、もっと欲しかったのは黒のカンゴールのキャスケットでした。
緑のカンゴールのハットがくるのは正直予想外でした。

411の水着スナップに出たくらいじゃ緑のハットは使いこなせません。
でもせっかくB系でダンサーのかっこいい彼氏からもらったプレゼントでしたので、わたしも期待に応えたかった。
髪に細かいパーマをあててみたり、友人に相談したり、できる限り努力はしたものの、なかなか緑のハットの答えはでませんでした。

この騒動、ついには家族会議を開くまでに発展しました。
わたしは追い詰められていました。緑色のハットに。
細かいパーマまであてて悩む娘。
家族もなんとかしてやりたい、そんな思いだったと思うのですが、
緑色のカンゴールをどう被ったらいいか誰にもわかりませんでした。


家族会議の結果お父さんがかぶる。という結論で決着がつきました。
植木屋の父が作業帽として緑の帽子をかぶるのが1番適した使い道なのでは。というのが我が家の答えでした。
わたしも悩みすぎて判断能力が落ちていたのでしょう、それがいいと言って納得したのでした。
結局緑色のカンゴールのハットをわたしも父も一度も被ることはなく、緑の帽子が似合う女
になれなかったからかどうかは知りませんがその彼とは別れてしまいました。現在、その彼も緑の帽子の行方もわたしは知りません。

ちなみに今わたしがよく被っている帽子は、紺色のアヒルの絵の描いてあるキャップ帽です。