里に帰った

里帰りをしてもう1ヶ月近くになる。久しぶりに生まれ育った埼玉の町で生活をして思ったことは、東京で暮らす人の方が愛想が良いということであった。都会の人は冷たいなんて聞くけど、そんなことはない。都会の人の方が感じが良い。少なくともわたしが住んでいる東京の町は、この町よりも感じ良い。

スーパーに行くとよくわかる。この町の店員は自分のことで精一杯なのか、客がきて邪魔になっていても品出しをやめないし、どかないし、挨拶もしない。客も客で、セルフレジがわからないおっさんが「すいません」じゃなく「おい!」と言いながら小銭をセルフレジに叩きつけながら店員を呼んでいた。感じが悪い。カスタネットでも叩いて呼んだ方がマシだと思った。

臨月であるわたしは暇なので毎日散歩をしているのだが、こないだうっかり散歩中に転んでしまった。ゆっくりと前に倒れながら左回旋し、無意識に腹を地面に打たないように着地した。すぐに起き上がれず、仰向けになりしばし青空を眺めた。その後ひっくり返った虫のように足をバタバタさせ体を起こす。左腕と膝がヒリヒリしている。擦りむいたと思うけど衣類で覆われていたから血は出ていなさそう。転んだ衝撃でお子の頭は悪くなっていないだろうか。そこからゆっくり立ち上がろうとしていると、自転車を押したおばさんがノソノソとわたしの横を通り過ぎていこうとした。この人は、わたしが転んでから倒れて虫みたいになって起き上がる一部始終を見ていたはずなのに無言で通り過ぎて行くのかなぁ。と思うとさみしかった。大丈夫?でもいいし、あららでもあははでもいいからなんか言ってよと思った瞬間「すみません」と自分からおばさんに声をかけてしまった。おばさんは俯いて目も合わせないまま「すみません」と小さい声で呟きそのままゆっくり通り過ぎて行った。やばい人だと思われたのだろうか。なんであんな閉ざしているのだろう。しばしおばさんの後ろ姿を眺めた後、立ち上がって散歩を再開した。

 

この町に不満を感じつつもおそらく人生で一番何もすることがない今を楽しんでいる。本を読んだり、朝ドラを見たり、朝寝したり、ブログを書いたり、昼寝したり、ネットサーフィンしたり、お菓子を食べたり、お金のこと考えたり、散歩したり最高である。実家でだらだらしていても妊婦だからと多めにみてもらえるし最高である。白くまアイスあずきバーが最近のお気に入り。一向に懐かない実家の犬が膝の上に乗った。姪っ子にシールをあげて機嫌を取るなどささやかな毎日を送っている。

予定日を過ぎたが一向に出てくる様子のない我が子。あの時の転んだ衝撃で出かたがわからなくなってしまったんじゃないかと母は心配している。