先日「LOVEファッションー私を着がえるとき」展に行きました。
この展示に行くきっかけとなったのは「そういえば小谷元彦さんはどうしているのだろうか」と私が美術鑑賞に興味を持つきっかけとなった美術家の小谷元彦さんへのふとした思いで、早速小谷さんのホームページを見てみると最新の動向にオペラシティーで行われていたLOVEファッション展に作品が展示されていることが偶然わかり、運命もファッションもLOVEもみんなだーいすきというかんじの私は「先生、見に行きます」と6月のよく晴れた日に初台にあるオペラシティーに向かったのでした。
今回のファッション展は
1、自然にかえりたい
2、きれいになりたい
3、ありのままでいたい
4、自由になりたい
5、我を忘れたい
の5つの章に分かれていて、これらの章に沿った衣服や造形や写真・本の一節などが会場に美しく展示されており非常に見応えがありました。一方展示の規模はそこまで大きくないので3周くらいくるくる回って見られるくらいの軽やかさもあり、普段美術鑑賞に馴染みのない人でも楽しく気負いなく見られそうだなと思いました。せっかくなので章ごとに感想を...
1、自然にかえりたい
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古代ギリシャ・ローマの人々は生花の花輪や冠で身を飾り、18世紀ヨーロッパの貴族たちは男女関係なく草花模様で身を包み、遠く昔から人類は毛皮の肌触りと温もりで酔いしれ、時には鳥の羽で着飾って高翼感を感じたりしてきました。花に囲まれて暮らしたい、いきものの温もりを感じたい、自然に対する憧れや身近に置いておきたい願望は、時代や地域にかかわらず人々が抱く感情だということが掲示れていました。その結果、種の絶滅や生態系の破壊を引き起こされてしまったことも周知の事実です。

そこで思い浮かぶのはステラ・マッカートニーです。ビートルズのポール・マッカートニーの娘でもある彼女ですが、デザイナーとしても多くの功績を納めています。ステラといえばレザーやファーなどの動物由来素材を一切使用しないことで有名ですが、動物愛護活動にも積極的だそうです。

一方、ステラマッカートニーのフェイクファーの左となりにはボッデガ・ヴェネタの真っ赤なラムファーが並んでおり、フェイクとリアルの対比ができるようになっていました。見比べた感想はどちらも美しい。

この二つの作品がわざと背中あわせで「ふんっ」と敵対しているよう配置されたのかなと思うのは考えすぎでしょうか。
ちなみに私は生半可な人間なので動物は好きだけどお肉を食べるのも好きで、動物に申し訳ないけどお肉は大好物なのですが、この素敵なコートを作るためだけに動物の命が奪われるのは良くないなと思う一方、美味しくお肉を食べてこれからも元気に生きていきたいと願っているので、美味しくいただいた動物の毛や皮を利用して素敵な何かを作るというのは命を無駄にせず良い循環になるのではと思っています。だけどやっぱり毛皮はいいね、レザーは素敵だよねという人が増えれば需要過多になって問題が起きそうなのでどちらの意見も大切というのが今の私の意見です。gizenですかね..
そしてそのすぐそばに展示されていたのは、私が今回楽しみにしていた小谷元彦さんの作品です。ファーvsフェイクファーの熱い戦いのすぐそばに平置きになっていたので最初気がつかなかったのですが「おや、こんなところに」と覗き込んだ瞬間、自分の体温がヒュッと下がったようなゾクゾクした感覚を瞬間的に感じました。


さすが先生、人間の毛髪でドレスをお作りになっておられました。フェイクファーとリアルファーの抗争のそばで「こちとら人毛ですけど」というくだりになっているのか!と勝手に考察したのですが真相はわかりません。願わくばこのチャプターの配置を担当した方と飲みに行きたいものです。
着用写真も近くに展示されておりました。

私が初めて小谷元彦さんの美術展を訪れた時に、先生ご自身の血液をシャボン玉に込めて真っ白いキャンバスにシャボン玉をブチ当てて血液を弾かせるという映像作品を見たのですが、その時の瞬間的に背筋が凍る体験を忘れることはなく、あれから10年以上経ってまた先生の別の作品で同じような体験ができてとても感動いたしました。すげ〜!!北関東から見にきてよかった...私はホラーが苦手なのですが、怖いものを見た時と似たような感覚を体験できて癖になるというか...また別の形でヒュッとなってドキドキさせてくださいと思いながら人毛ドレスを後にしました。

2、きれいになりたい
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服を着ることによって「きれいになりたい」「美しく見せたいという」と思う気持ちは多くの人が抱いたことのある身近な感情のように思います。この章ではその時代に沿った「きれいになりたい」欲望の造形が展示されておりました。ウエストをS字に締め上げるコルセットや、スカートを丸く膨らませるための歩きにくく重たそうなクリノリンなど、どの時代にも「きれいに見せるための苦行な装い」があるのだろうと思われます。現代だと苦行な装いって何でしょうか。整形?
1997年。それまでの均等のとれた身体美とは全く異なるドレスが登場しました。今までの価値観や概念を疑う意思を込めた作品が発表されたのですが、それがコムデギャルソンの Body Meets Dress, Dress Meets Body通称「こぶドレス」と呼ばれる作品です。

私は一時期コムデギャルソンのデザイナーである「川久保玲さんにハマる」というブームがあって、尊敬する人は?と聞かれたら川久保玲と答えようとずっと思っていて誰にも聞かれずに今に至るのですが、川久保玲さんの何がすごいと思うのかというと、常に概念を壊し新しい何かを呈示し続けながらも、売るという商業的な部分も成果を出していて、ドーバーストリートマーケットという素敵で洗練された空間も提供していて、世界的に有名で第一戦でご活躍されていることに(現在82歳だそうです)尊敬しかないです。知ってるよという感じかもしれないですが、改めてすごい方ですよね。この章だけではなくコムデギャルソンの功績は別のチャプターでも紹介されていました。川久保玲は日本の誇り!
もう少し私とコムデギャルソンの思い出を語りますと、川久保ファンだけどコムデギャルソンの服は洗練されすぎて着こなす自信が持てず、だけど同じ空気を吸わせてもらいたくて仕事が早く終わった日は新宿伊勢丹の3階に行きましてコムデギャルソンの店のあたりをイワシのようにぐるぐるぐるぐる回り、休日はドーバーストリートマーケットに行って狂った鳥のように下のフロアから上のフロアへと行ったり来たいりして快楽を感じていた頃がありました。そんななかでたった数点ではありますが、ドキドキしながら尊敬するコムデギャルソンを購入したのはいい思い出です。
3、ありのままでいたい
「ありのーままでー」という歌詞の歌が流行ったのは2014年ごろですが、社会の流れでは2010年頃から「ボディ・ポジティブ」が唱えられ、様々な価値観の共生を目指そうという姿勢が今日までの間に徐々に広がったように思われます。
ビックメゾン(という響きかっこいいですよね)からも西洋の伝統的で理想化された身体ではなく標準的な身体を基礎とした服が発表され、野暮な下着を躊躇なく透かし見せたデザインなど平凡さを肯定的に容認する作風も見受けられました。

ここ数年でよく見かけるシアートップスももしかしたら「ボディ・ポジティブ」からの流行りなのでしょうか。わかりませんが...
素敵な憧れの服というのは「ここぞという時に着る服」という思いがある一方「素敵な服なら毎日着たいよね」と思う気持ちもあります。そんな気持ちを代弁してくれるブランドがsacaiです。

よく見ると服が何層かに重なっているがパッとみるとドレスのフリルのよう
「日常の上に成り立つデザイン」をコンセプトにしている阿部千登勢氏がゴルチエの過去のコレクションを新しい形に再構築した作品ですが、よくみるとタトゥーの入ったレギンスを履いていたり、ドレスのフリルかと思っていた部分がシャツだったり、ピンクのブラジャーが重ねてあったりと日常の着衣が隠れていて謎解きのようでワクワクする服だと思いました。ちなみにピンクのややとがったブラは90年代にゴルチエ氏がマドンナの衣装を手掛けて象徴的なものとして確立した「コーンブラ」がモチーフとなっているそうです。
4、自由になりたい
国籍、言語、民族、宗教、文化、階級、職業、年齢、性差....予めつくられた「物語」を生きる私たちは、自己に輪郭を与えるため、しばしばアイデンティティを衣服に委ねます。との掲示とともに日本の宝である川久保玲がウィーン国立歌劇場創立150年を記念したオペラ「オーランドー」で手掛けた衣装がスクリーンの下に飾られていました。

オーランドーというヴァージニア・ウルフの小説で(この方も女性)青年貴族のオーランドがある日突然女性に変身し、時代や性別を超えて生きる姿を描いている作品だそうです。
私自身はおめでたい人間だからなのか、自由になりたくて服を選んだということはなく正直一番ピンとこないテーマなのですが、それは私が性自認が一致していて無宗教で日本の平凡な家庭でボヤッとぬくぬくわりと自由にマジョリティー側で育ったからなのかなと思いました。ただこの章から思い浮かんだのは、セックスアンドザシティの映画でアブダビに旅行に行ったSATCのメンバーが大変な目に遭いそんな中でヒジャブを纏った女性達に助けられるシーンがあるのですが、ヒジャブの下をチラッと見せてもらうとめちゃくちゃ華やかで素敵な洋服を着ており、みんなで素敵素敵〜と喜ぶシーンを思い出しました。
5、我を忘れたい
私は私。でも、私はどこかで今とは違う私の夢をみています。そういった変身願望とそこから得た欲望を追い求め、ときに支配されるという旨の掲示にわかりみ〜と思ってしまったのですが、まさに私にそんな夢を抱かせてくれる作品がこちらです。

MISIAが東京オリンピックの開会式でトモコイズミのドレスを着用して話題になりましたが、フリルとリボンで埋もれそうな夢いっぱいのこのお洋服を見てこれを着たらどんな気分になるだろうかと想像してしまいましたね...しかもこちら私の好きなズボンなんですね!私の人生にあまりスカートは登場しないのですが、なぜかというとよく自転車に乗るからというそれだけの理由なのですが、これなら自転車もいけますね。髪型はチュンリーみたいなお団子かレディーガガがやってたリボンの髪がいいかもしれません。素敵です。

そんな見ているだけで自然と気持ちが昂ぶる衣服の側に手のひらサイズの透き通った装いの展示がありました。



ヤドカリは心地よく気に入った宿でないと中に入って活動しないようなのですが、少しずつヤドカリが中に入って生活できる世界の都市宿は増えていっているそうです。この展示でAKI INOMATAさんの活動を知ってとても興味深く、魅了されました。
✳︎展示を見て得たことから考えてみよう
当たり前に毎日服を選び着ている我々に、衣服を通して様々な思いや感情を表していることを今回の展示が具体的に教えてくれました。
さてこの日、わたしの格好は何を表していたのでしょうか。展示を通して考えてみることにしました。
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ギャルソンが好きだと言っている人とは思えない格好をしていますが、私はよくこのような格好をしています。ちなみにこの日も駅まで自転車に乗ってきたので当たり前のようにズボンを履いています。Tシャツは今年H&Mで発掘した「GUAVA」とデカデカとプリントされ、さらに大きなグアバのイラストまで描かれたおニューのものです。5月のちょっと涼しいときに「この夏っぽいグアバののTシャツを着て今年の夏を元気よく過ごしたい」という思いで購入し、6月のよく晴れたこの日に初めて袖を通しました。ズボンはリーバイスの501のデニムですね、真っ青な海のような色で夏を表してます(グアバに合わせて)。
つまり私は1章の「自然にかえりたい」に記されたような感情でこのTシャツを選んだということがわかります。グアバを身につけたい!海っぽいな!という気持ちなので。ちなみに鑑賞後に待ち合わせをしていた姉に「なんか今日は元気な格好をしてるね」と言われました。グアバファッションに込めた「元気に過ごす」という思いが姉には察知されたようです。
また「夏っぽいから」という季節を感じて衣服を選ぶという感覚はもしかしたら日本人特有の考え方なのでは?ということも展示を通しての気づきです。本当にそうならそれはとても誇らしいことのように思うので、その気持ちを大切に今後も服を選びたいと思いました。
とっても楽しい展示でした!