私とミスタードーナツ

最近何かと理由をつけてはミスタードーナツを買っている。最初は美容室に行った帰りに駅前にあるミスタードーナツに立ち寄りドーナッツを数個買うことを楽しみにしていたのだが、ここ数週間で息子がバスにかなり興味を持ち始めバスに乗って駅まで行くという機会が増え、私とミスタードーナツの距離はグンと縮まった。ちょっと子とバスに乗ってくるよというのは私の中ではミスタードーナツに行ってきますねということと等しくなったのだ。

ミスタードーナッツはいいですね。ミスタードーナツは安くて美味しくて華もあって満足感もあって特別感もあって種類も豊富でレジも早くて素晴らしい。幼少の頃、家の近くにミスタードーナツはなく、車で20分ほどの遠くの駅前に一応ミスタードーナツはあったのだが、うちの親が「ミスタードーナツは美味くない」というアンチミスド派だったため我が家がミスタードーナッツに近づくことはなかった。その後、アンチミスド派の家の娘は高校生になり、最寄り駅にミスタードーナツのある高校に進学したのだがなんせ私はアンチミスドの家の娘だし、さらにその頃はダイエットに勤しみ痩せすぎて保健の先生に呼び出されるほどだったため「あんな油であげたワッカ食えるか」と言ってミスタードーナツを口にすることはほぼなかったのだ。

成人後も、職場に清掃に来るダスキンのお兄さんから時々もらうミスタードーナツパスポートというこれを見せればドーナツがみんな100円だよ!というカードをもらうことくらいしかミスドとは接点がなく、しかもそのカードをもらっても「なんだよまたミスドのカードか、スポンジくれよ」と私の中ではミスドの価値はダスキンのスポンジよりも低く、もちろんそんな価値観で生きていたためその後もわたしがミスタードーナツを口にすることはなかった。

そんな私がミスタードーナツの虜になったのは30も過ぎた頃であった。出産という人生経験を機に趣味の飲酒を断つと私の欲の矛先は甘いものに向き、とにかく甘い物への執着が高まった。さらに引越しをして家からミスタードーナツが割と近くにあることで、私はミスタードーナツへの興味が湧いたのであった。

こんな経緯で私はミスタードーナツのアンチからファンへと移行した。いや、ファンとはまだ言えないかもしれない。ただアンチから脱出しただけの生まれたてのヒヨコ。ミスドの関心は高まりつつあるがミスドについては右も左もわからず、ミスタードーナツの中で一番好きなドーナツが何とも言えない。いつもミスドに行くと悩んでしまうのでなかなか思い切って列に並ぶことができず、ドーナツの並ぶディスプレイの2メートルくらい離れたところから今日はどのドーナツにするかを悩んでいる。しかしもいざドーナツの列に並ぶとやっぱりあれを取りたかった!ともう列から過ぎ去ってしまったドーナツのことが急に恋しくなってしまい、眉毛を八の字にさせて「すみませんすみません」と本当に申し訳なさそうな顔を作って列を逆走し、お目当のドーナッツをトングで取ったあと再び最後尾に並んだりしてるのだが、そんな時の苦労して取ってきたドーナツのうまいこと!でもできることならさっさとお気に入りのドーナツを見つけて迷うことなくレジまで運べるようになりたいと願う。

モチモチした食感のポンデリング、華やかで天使の輪のようなエンゼルフレンチ、ゴツゴツしてかっこいいオールドファッション。みんなどれも良くて今のところランキングをつけることができないでいるが、正直どれもさほど大差なく平均的にまぁみんな美味しいよねミスドはという冷静な分析をする自分もいる。