引っ越すその1

仕事に復職し子供を保育園に預ける予定だったため引越し先は今住んでいる中野圏内であることが条件だったのだが、仕事を辞めて子供が保育園に行かなくなった今、我が家族はその縛りから解き放たれた。夫もほぼ在宅勤務になったため引越し先の選択肢がかなり広がり、私はつくばに住むことに憧れを抱くようになった。以下つくばへの熱い想いを綴ったブログ↓

satomiconcon.hatenablog.jp

 

思い立ったら行動に移すフットワークが軽いタイプなので、先日、つくばに物件を探しに行った。

まずはUR賃貸に目を付けた。URは行政が古い団地を小綺麗にして貸し出していて仲介手数料や更新費がないとのことで、広い部屋をお得に借りれるのかなと期待をしていた。また私は古い建物が好きなので築年数も気にならないし、団地も好きだし、もし団地に住んだらつくばの団地妻と名乗れるのも悪くないなと考えていた。

都心には数少ないUR物件だが、つくばには選べるだけの物件数があった。来店日、あらかじめインターネットで目星をつけておいた物件をこれこれと提示して4件ほどの物件を見に行くことになった。

「タクシーで回ります」とのことでURの店員さんとタクシーで物件を巡ることになったのだが、なぜか店員はタクシーを2台呼び、1台に店員さん、2台目に私と夫と1歳の子供が乗るよう指示をした。どう考えても1台無駄だと思う。我々の乗ったタクシー運転手も「あの人なんで2台呼んでんですか」というようなこと言っていた。結局最後までなんでタクシーを2台呼んだのかわからなかった。店員さんが別のタクシーに乗ってしまったので、我々はタクシーの運転手につくばの街事情を色々聞いた。車を持つ予定も乗る予定もしばらくないことを告げると、だったらこのエリアは不便とか、このエリアは駅から遠くても高速バスが出てるから都心に出やすいなどアドバイスをくれた。実際につくばにきてみるとGoogleマップで見ていた距離感とはだいぶ異なり、道は広くでかいし規模感がまるで違かった。タクシー運転手が「車ないの?こっちの人は何をするにも車だよ」と言っていたのだけど確かに車がある方がいいだろうとは思っている。だけど私は免許を持っていないので免許をとるところから頑張らないといけない。夫は免許は持っているが「絶対に事故を起こす自信があるから車には絶対乗らない」というポリシーを持って生きているのでその意を尊重したいと思っている。私も事故を起こしそうなタイプで不安はあるが子供と一緒につくばわんわんランドへ車で行きたいので、免許をとって安全第一で頑張っていきたいと思う。ところが「茨城は一般道を80キロで走っていないと煽られる」「黄色信号になったらダッシュしないと(茨城ダッシュという)煽られる」らしく(タクシーの運転手さん情報)安全に走っているとむしろ事故に遭う可能性が浮上。果たして私は無事に免許を取得し茨城県民の洗礼を受けながら家族を無傷でつくばわんわんランドへ連れていくことができるのだろうか。今後の私の活躍を皆さんにも見守っていてほしい。

タクシーの運転手さんはつくばの街事情の他、UR物件事情も詳しく教えてくれた。UR物件はエアコンがついていない物件が多いそうで、その手配も引越しの時にしないといけないことや退去の際はエアコンを撤去する必要があることを教えてくれた。「入るときに安いと思ってもエアコンの購入や工事、インターネットの回線の手続きなどがあって結局高くつくってこともあるみたい」とアドバイスをしてくれた。仲介手数料更新費がなくてお得!かと思いきやそうではない可能性があること、つくばは道も広くて車の運転がしやすい!とばかり思っていたが茨城ダッシュなどという荒ワザが飛び出すことなど、インターネットの情報だけではわかり得なかったことが地域住民の声から判明し、現場に足を運ぶ意義を感じたのだった。

 店員を乗せたタクシーを追いながら希望のUR物件に到着。the団地と言わんばかりのUR賃貸の風貌に団地妻に憧れる私は魅了された。殺風景な階段を3階ほど上がって内見する部屋に向かう途中「新聞配達の方いつもご苦労様です。新聞はこちらにお願いします」などと書かれたボックスを目撃し、近隣住民の人の良さが垣間見え好感が持てた。

内見した部屋は今住んでいる中野の部屋の2倍は広いし良かったのだが、靴箱が見当たらなかった。店員に尋ねると靴箱、エアコンの設置は自分で行うようにとのことであった。タクシーの運転手から退出時は撤去しないといけないと聞いたことを伝えると、やはり「そう」とのことであった。エアコンも靴箱も撤去、もしウォシュレットをつけたらそれも撤去して退去する必要があることを説明された。「次の人も靴箱やウォシュレットがあった方が嬉しくないですか?」と店員に言ったところ「そういう問題ではない」と返答された。じゃあどういう問題なんだろうと思ったがタクシーを2台呼んだこと同様、深くは追求しなかった。

茨城に慣れるかまだわからないし、環境が自分には合っていないと思えばまた東京に戻ろうと思っているので、長居をする確定もないのにエアコン靴箱問題は重荷だった。その後も希望のUR物件を内見したのだが、物件は良くても例の条件が気になり返事は保留ということにした。全ての内見が終わりタクシーのメーターを見ると9800円だった。つまり今回の内見で19600円の経費がかかった訳である。経費を削減して靴箱買ったらどうですかと言いたかったが、きっとそういう問題ではないんだろうなと思った。

せっかく茨城まで来たので、民間の不動産会社にもよることにした。 近くにエイブルアパマンショップがあったのだが、エイブルはなんか嫌いだったのでアパマンショップに行くことにした。しかし到着するとアパマンは休業だったため、渋々エイブルに向かうことにした。

エイブルに到着し、カウンターに腰をかけるとマスクをつけたお姉さんが対応してくれた。お姉さんは茶髪の長髪を一つに結わき、茶色いカラコンをして、軟骨には複数の小さい球体のピアスがついていた。ギャルだった。歳は私より少し上か同じくらいだろうけどギャルと言っていいだろう。長い髪もピアスも茶色いメイクとコンタクトもよく似合っていて、根がギャルの私は好感が持てた。さっきまでエイブルはなんか嫌いと嘆いていたのに、もうすっかりお姉さんとエイブルのファンになっていた。

小さい子連れで車を持っていない我々にあった物件をお姉さんはテキパキと選んでくれた。タクシーの運転手さんからおすすめされなかったエリアも、実はバスの本数が多くて割とアクセスがいいですよとか、このエリアに私も住んでるけど小さい八百屋があって安くて新鮮ですよなどお姉さん目線でアドバイスをくれた。

しかも紹介してくれた物件の半数は更新費がかからなかった。そのことは更新費に絶大な不審を抱いてる私からすると気分が良かったし、更新費がない物件が多数あるならURに絞って探す必要はなかったなと思った。お姉さんにURを内見してきた話をすると「URって網戸ついてないですよね?」と盲点を指摘された。まさか網戸までないとは思いもしなかったので「え?網戸もないんですか?」と驚くと「え?え?わかんない!わかんないわかんない!あれ網戸は違かったかな?」とお姉さんは篠原涼子みたいな口調で軽いパニックを起こしていた。真相は不明だがUR賃貸には網戸もないようです。

もうすっかり夕方になりさっさと帰りたかったので、お姉さんがピックアップしてくれた物件の中から気になる物件を一か所だけ内見することにした。物件まではお姉さんの運転で向かうことになった。移動中、タクシー運転手から仕入れたばかりの茨城交通事情をお姉さんに話すと「ミニバン・エスティマには気をつけた方が良い」と要注意車種まで教えてくれた。お姉さんは運転をしながら息子の名前を呼びかけ、停車中は可愛い、可愛い!と言いながら拍手をして息子をあやしていた。「もうこんな時期すっかり忘れちゃいました」と言うお姉さんにお子さんの年齢を聞くと「今中学生で」と返答。まさか中学生のいるお母さんだとは思わず驚いていると「21の時に産みましたー」と朗かにお姉さんは答えていた。お姉さんの安心感は母として10数年の貫禄から滲み出たものなのだろう。読み通りお姉さんは私と同世代だったけど、母としては10年以上先輩であった。

そんなお姉さんは途中道に迷い同じ道をぐるぐる回りながらも我々のことを希望の物件まで案内してくれた。内見した物件は靴箱もあり、網戸もあり、中野の今の家よりも機能的で申しぶんなかった。それなのに家賃は今の家より安い。良い物件だった。

帰り道。お姉さんは周辺環境を簡単に案内しながら、我々をつくば駅まで送ってくれて解散となった。最後までお姉さんの笑顔は素敵だった。マスクで半分顔が見えなかったが、そう思った。次引っ越すときもお姉さんとエイブルを頼ろうと思う。

帰宅後に夫と話し合いをしたところ、とりわけ悪い点が見つからなかったという理由からお姉さんが紹介してくれた物件に決めることにし、内見の翌日にはメールと電話で契約がはじまった。こんなに早くつくばに引っ越すことになるとは思わず、私はカタカタと震えた。

団地妻にはなれなかったが、私は近日つくばのマンションに引っ越すことになった。当面の目標は運転免許を取得して、ミニバンとエスティマに気をつけながらつくばの街を運転できるようになることである。