悩ましい

もうすぐ1歳を迎える息子は掴まり立ちに勤しみ、動物に喜び、絵本に興味を持ち始めた。しかし食への関心が低くパンを嫌い、ひき肉を敵視し、よく食べ物を残す。そこそこ食べた日にはエラーイ!テンサーイ!と親バカでただのバカな母親が拍手をして喜んでいたら「拍手はご馳走さまの合図」と息子が解釈をしてしまった様で、食べるのが嫌になるとパチパチと勝手に手を叩き食の時間を終了させようとするようになってしまった。

しかし食べ物に関心がなく食が細い割に彼はとても豊満な体をしている。それは多分おっぱいの恩恵によるところが大きい。授乳の回数がなかなか減らない。そろそろ早い子だと卒乳もする子もいるのだが、全くそのような様子は見受けられない。食の関心はないがおっぱいの執着はすごい。食べ物を自ら手に取り食べることはしないのに、乳が欲しい時には母にしがみつきTシャツを引っ張り頭突きをされる。この時期は好きなだけあげて良いというからそれに従っているが、このまま素直に彼の意に従っていいのだろうかと悩ましく思うこともある。どう見てもただ口さみしいとかちょっとイッパイやっときましょうかみたいなノリの時があるからだ。

小児歯科のガイドラインによると授乳は1歳半を目安に卒乳させることを促している。歯科的な観点からすると、授乳をしなくても食事で栄養を補うことができること、また夜間の授乳はむし歯の原因になり得ることからそう指示されるのだが、息子があと半年で卒乳できる気もしないし、夜泣きをして乳を差し出さずに対応できる自信もない。息子もそうだが私自身も自分の乳に非常に依存をしている。私が育てたわけでもなく乳が息子を育てたと言っても過言ではない。世の大人がおっぱいに関心があるのもこれだけ世話になってればそうですよねと納得してしまう。

依存から脱却できないからという理由だけではなく、もう一つ興味深いことがある。それは授乳が口蓋の発達に寄与するという説でこれは矯正科の先生が語っていることが多いのだが、中には2歳くらいまで飲ませていた方が歯並びの良い子に育つと提言している先生もいる。私の子育ての目標の一つに歯並びの良い子に育てるということを掲げているので、その先生の言うことが誠ならばもうじゃんじゃんあげますよバンザーイと両手を挙げて喜んでいたのだが、しかしその根拠を決定づけるエビデンスを今現在見つけることができていないのでバンザイの手を下げた。エビデンスを重視するわけではないがエビデンスは大事である。もちろん臨床での経験も非常に需要で、現場で体感した知識や経験が最もだということもある。

職場では子供が全く来院しない環境で働いていたため乳幼児の歯科知識が本当に乏しくて、恥ずかしい話自分の子供の歯がどっからいつ頃から生えてくるのかもついこのあいだ知ったレベルである。一応歯科衛生の専門家として10年以上働いてきたのにまるでわかっていないのだから、多くのお父さんお母さんが子供の口のことで疑問だらけで謎だらけであるのではと感じている。

それなのにも関わらず、相談した先生の見識によってさっさと卒乳を促されたり2歳まで吸わせましょうよと言われれば困惑するだろう。歯科衛生士の友人は1歳を満たないうちに卒乳させた子もおり、それを誇らしいことのように話ていた。もちろんお母さんも赤ちゃんも頑張ったのだから誇らしいことだが、何でその選択をしたのかということを自分の中で持っておくことが大事なことのように思う。

 次また歯科業界で働くならば子供の歯に関わる仕事がいいと思っている。歯の健康を考えた時にいかに早いうちから歯の健康意識に目を向けるかが大事ということを10年でヒシヒシと感じてきたので、子供から親もついでにお爺さんもお婆さんも巻き込んで支援できたらいいなとぼんやり思っている。歯石を取るのも何かをこねたりするのも苦手なので、個人の歯の健康維持について語ってお金がもらえたら嬉しいな。