勘違いした脳

10年間くらい足の小指の爪が生えてこない時期があった。
もうそういうもんなんだろうと思って特に気にしていなかった。足の爪にマニキュアを塗るときはない爪のところを一生懸命にぬって、果たしてこれでいいのだろうか、この塗り具合でいいのだろうかと、ない爪と格闘をしていた。
爪も生えないことも悩みだが、オープントゥのサンダルやパンプスを履くと、やけに足指が空いた隙間から飛び出るという悩みも持っていた。
足の指2本が空いた隙間から飛び出るのだ。飛び出た足の指は、塩抜きをした時のあさりみたいだった。すごい嫌だった。

2つの悩みの原因を自分なりに考えてみると、小指の爪が生えてこないのは先天的異常で、あさりみたいになるのは足指が長いためと結論付けたのである。

ある日、わたしはニューバランスショップを訪れた。
そしてこの日わたしの人生を変える出来事が起きたのであった。

ニューバランスでは店員さんが足の長さを測定し、自分の足にあっているスニーカーをアドバイスするサービスがある。
わたしはこのサービスを何気なく受けたのだった。

わたしは24.5センチの靴を普段履いていた。多分10年以上は24.5センチを履き続けていた。
そして測定の結果

わたしの足は26センチ。男並みの足のサイズということが判明した。
さらに、

「足が変形しかけてますね。足の指が曲がってますよね。豆もすごいですね。このまま小さい靴を履いているともっと変形しますよ?」

店員さんは真顔でわたしの足の現状と今後の予測を伝えてくれた。 
さらに、

「足幅が狭いですね(足囲というらしいです。)足が細い。合う靴が少ないですね。細いからサイズが小さい靴も入ったんでしょうね。」

そういうと、店員さんは離席し、靴を選んで持ってきてくれた。選んでくれたのはニューバランスの990。26センチの男並みにでかい靴が運ばれてきた。

(ほんとでかいな..本当にわたしの足ってこんなでかい?)

試しばきさせてもらったところ、なんとも心地がよくて驚いた。
足が包み込まれるような感じ。みんな靴を履いた時はこのような感触だったのだろうか?

「足が細いサイズってあまりないんですよね、あなたの足には靴紐とかストラップがついたもののがいいと思いますよ。」

オープントゥの靴を履くと指が出てきちゃうんです。」

「それは靴が緩くて足が前に前に動いてしまうからですね。」

なるほど、足の指があさりになる原因がよくわかった。足指が長いのではなく、足幅が狭いことが原因な訳か。

これを機にわたしは26センチないし25.5センチの靴を履くようになった。
スニーカーを見るときはメンズコーナーを見るようになった。時々悲しい気持ちになったりもするが、足のサイズが深田恭子と一緒。と思って自分を勇気づけている。

少しずつ26センチの靴が増えていき、今までお世話になった24.5センチの靴は全て処分をした。

するとである。

数ヶ月すると小指の爪が生えてきたのだ!

「あ!爪が生えてきた!!」

圧迫しすぎて爪が生えてこれなかったようだ。可愛そうな小指の爪。靴のサイズは重要である。

ちなみにオープントゥのあさりはどうなったかというと、オープントゥそのものを選ばなくなったので、靴のサイズが変わってからは試していない。

26センチの靴に履きなれた現在、24.5の靴を履くと足が痛くてとても履けない。
これは脳の錯覚も影響しているらしく、24.5を履き続けていると、脳もそれでいいのだと思い込んで、痛くても気にしなくなるようだ。人間の適応能力はすごいけど、時に恐ろしいものでもある。 


そして、わたしはあることに気づいたのだった。

「足のサイズも実際は1.5センチも大きかったわけなんだから、もしかしたらブラジャーのサイズも、2カップくらい大きいのかもしれない!」

何事も思い込みはよくない。わたしは学ぶ女。
早速伊勢丹新宿のランジェリー売り場に行ってサイズを測ってもらうことにした。
その結果、2カップ上のブラジャーを紹介されたのであった。

「だれだよ貧乳って言った奴は!脳が勘違いしていたじゃないか!」

とにかくわたしは貧乳じゃないということがわかった。伊勢丹新宿店のお墨付きである。

しかし現状は、どうみても貧乳である。

もしかしたらまだ脳が勘違いしているのかもしれない。

早く脳が目覚めてほしい。
そして、2サイズ下のブラジャーをつけた時に「きつっ...。こんなの付けれない。」というセリフを言いたいものである。