L'Arc〜en〜Cielは小学生の頃に好きだったバンドである。小学生という身分だがそこそこ頑張ってファン業を尽くした方だと思う。
L'Arc-en-Cielはノストラダムスの大予言の日に「ark」と「ray」というアルバムを2枚同時に発売した。当時私は小学校6年生だった。
小学生の私のお小遣いは月500円くらいだったのだが、アルバムは1枚3000円くらいだった。
お小遣い年半分の値段の物を2枚も買うということは、小学生にはなかなかハードルの高いことだった。発売前にarkにするかrayにするかかなり悩み、結果ray1枚を購入することに決めたのだった。この時は売り切れを避けるために、近くのサミットというCD屋さんに予約をしにいったことも覚えている。
発売日の当日。ノストラダムスの大予言も無事に外れ、念願のアルバムrayを手に入れることができた。
この時はとても嬉しかった。
手に入れて割とすぐに、熱を出して学校を休まなければならなくなった。そんな日はここぞとばかりに布団に横になりながら、新作のアルバムrayを堪能した。収録されたお気に入りの「侵食」「花葬」を交互に聴きながら、布団の中で 熱唱したのであった。
覚醒されたのは失くしてた傷跡この身体が奪われていく〜ah♪
瞳開けたまま腐敗してゆく身体〜♪
熱を出しながら小学生さとみこんこんは熱唱したのであった。
さらに固めのクリアファイルに切り抜きを入れてお手製のhyde下敷きを作成してみたりしていた。
また「L'Arc〜en〜Cielが演奏前にビジュアル系バンドと紹介されて怒って帰ってしまった!」という話を聞けば
「アナウンサーがラルクをビジュアル系バンドと紹介しないだろうか?」と謎の使命感を感じながらアナウンサーの失態チェックをこなすようにもなった。
このように、小学生なりにL'Arc〜en〜Cielへ奉仕し、わたしのラルク愛はなかなか深いのだ!と自信を持っていた。
そんなある日、スイミングスクールでのこと。
平泳ぎのコースでしほちゃんという新しい友達ができた。しほちゃんとは気が合いよく話をした。
そこそこ仲良くなったところで、わたしはL'Arc〜en〜Cielファンです。としほちゃんに打ち明けることにしたのだ。
なかなか熱心なファンなんですよ、下敷きも2種類あって正規と自作のオリジナル下敷きを持ってるんですよ。と言いたい気持ちを抑え、控えめな感じで好きなんだというこたを伝えた。
するとしほちゃん。
「本当に?!わたしもラルクが好きなんだ!わたしね、ファンクラブに入っているんだ!」
「!?」
ファ、ファンクラブ?!
「さとみこんこんちゃんはファンクラブ入ってる?」
「いやぁ...ファンクラブは....。」
わたしは、ファンクラブというものはジャニーズにしかないと思っていた。
L'Arc〜en〜Cielのファンクラブがあることもびっくりだったけれど、彼女がL'Arc〜en〜Ciel好きでファンクラブにも入っているという事実には驚いた。
ファンクラブに入っている=ファンの格としては上
この方式は私としほちゃんの間で、言葉にせずとも一致した。
しほちゃんのマウンティングがきまった瞬間である。
それ以来しほちゃんはなんだか得意げだった。
「これはファンクラブの中でもなかなか教えてもらえないんだけど、hydeの電話番号がわかったから、番号教えてあげるね。」
しほちゃんのマウンティングがきまった瞬間、わたしは辛いような、情けないような、なんとも言えない気持ちになって自分に自信がなくなってしまったのだが
しほちゃんから入手する情報は小学生ラルクファンのわたしにとってかなりの有力情報であった。
苗字は宝井と言うのか。ほうい?たからい?
どっちだーーー?!
(Wikipediaの情報だと、寶井と書いて〝ほうい〝と読むそうです。)
名前は秀人っていうのか。hideto →hydeto →hyde?!
だからかーーー!!!!
と小学生ラルクファンはなかなか興奮したものであった。
これは、今でも本当に本人の連絡先なのか謎なのだが、2回ほど、教えてもらった連絡先にかけてみたことがある。
心底手が震える思いで電話をかけたのだが、2回ともコールのみだった。
かけている時にドキドキして胸が苦しくて心臓に悪い!ということと、
ラブコールも終了したが、マウンティングしほちゃんとの友情も終止符を打つ時が来た。
わたしは平泳ぎからバタフライのコースに移動し、しほちゃんは平泳ぎのコースでスイミングスクールを引退することとなったのだった。
しほちゃんとはそれからしばらく文通をして近況を報告しあっていたのだが、いつのまにか連絡は途絶えてしまった。
マウンティングは時に人を不快にさせるが、そこを超えると大きな収穫に繋がることもあるんもんだなと、小学生の時に悟った出来事であった。
さて。
しかし現在でも時々、L'Arc-en-Cielの曲をかけてはやっぱりいいじゃない。と酔いしれ、グダグダになって誰も聞いていないようなカラオケで1人でラルクを熱唱することもあったりするのだ。
侵食や花葬を。