仮免許試験に落ちてしまった

題名のごとく最近受けた自動車教習の仮免の学科試験に落ちてしまった。教習所のホームページに満点様という模擬試験のアプリがあるのだが、その満点様でテスト勉強を始めたのが試験三日前。模擬テストをこなしてもこなしても表示される不合格の文字。受かる気がしなかった。二択なのになぜ合格ラインに達しないのだろうか。そして満点様はどうしてこんなに紛らわしい問題ばかり問うてくるのだろうか。日頃、紛らわしいという単語にまぎわらしいだっけ?まぎらわしいだっけ?の二択に悩んでいる私には教習所の問題は難問であった。とにかくベストを尽くそう。私は子に授乳をする時間を使って必死に満点様をこなした。

試験当日。基本平日しか行っていない試験を受けるために夫に有給をとってもらい、子を託して会場に向かった。緊張して夜中の1時に目を覚ましてしまいそこから数時間眠ることができず気分は最悪だった。

憂鬱で最悪な気分で向かう教習所は朝の8時半集合であった。受験者は私の他に20歳くらいの女の子が1人。三つ編みをした可愛らしい子だった。技能試験の前に仮免受験生二人は教室に集められ、教官から試験にあたっての説明や諸注意、心構えの話を聞いた。とにかく緊張しないで70点を目指して頑張りなさい。緊張して眠れなかった私に教官からの熱いメッセージは心に響いた。そうだ70点を目指して頑張ればいいのだ。満点様で満点を目指していた私には肩の荷が降りる言葉であった。

まず三つ編みの女の子から技能試験がスタートした。運転席に女の子、助手席には教官、後部座席には私が座り見慣れた教習コースを走行した。女の子はテキパキと運転し、後方確認もきちんとしておりとてもスムーズに運転していた。上手だなと思いながら自分も後部座席で運転の手順を確認していた。私も彼女のように上手に運転できるだろうか。順調に軽快に進む車内が突然ガタンと揺れたのは試験コースも残りわずかというところであった。ガタンと揺れてからの彼女の運転は気が動転しまったからなのか、あんなに丁寧に確認していた後方確認も進路変更も忘れ、そのままクランクのコースへと進んでいった。彼女はなんてことない道で脱輪してしまったのであった。

なんであんな何もない普通の道で落ちたのだろうか。

「ブブ...」

私は笑い声を出さないよう踏ん張りながら笑った。幸いこのご時世、私の笑みはマスクのおかげで彼女には見えていない。多分きっと自分の後部座席でめっちゃウケていたとは気がつかなかっただろう。

その後彼女は順調に運転し、コースを完走した。

「君ちょっとこっちへ、後部座席の君はこのまま車に乗ってて」そう言って彼女は教官に連れられ角の方で何故あそこで落ちたのかと問われていた。

待つこと数分。三つ編みの彼女と私は運転を交代し、私の試験の番となった。突然脱輪してしまったことを所どころで思い出し笑みが込みあげたことがリラックス効果となったようで私は順調にコースを進み完走することができた。

運転終了後、教官からもよく注意して運転できていたとお褒めの言葉をいただき、ホッとしながら後部座席の荷物を取ろうとすると、三つ編みの女の子がニコニコしながら私の荷物を持って車から降り、そのまま手渡してくれた。心配りのできる優しい彼女のことを笑ってしまった。いい歳のくせに人の失敗を歯を食いしばりながら笑ってしまった。心を痛めながらお礼を言って彼女から荷物を受け取った。

その後待合室で待機し、技能試験の合格発表を待った。待つこと数分、合格発表のアナウンスが流れた。受験番号2番の私は合格、1番の彼女は不合格とういう結果が提示されたのを見て「やっぱり」と思いながら1度自宅に帰宅。昼食を食べ子供に乳をあげ、また教習所に戻った。

そしていよいよ午後は自信のない筆記試験である。受験者は私の他に20歳くらいの男性が二人。三つ編みの彼女の姿はなかった。

私は途中お腹を冷やしたら困ると膝掛けを持参した。膝掛けを体にグルグル巻きにし、少しでも冷気を浴びて腹を壊さないよう厳重の注意を払って試験に挑んだ。試験は50問の100点満点、90点以上が合格である。私は頭の中で唱えた「満点をとらなくていい90点でいいんだ!10問間違えて大丈夫。大丈夫大丈夫!」そういって自分を鼓舞させた。試験中自信のない問題はあとで見直すためにメモの欄に問題の番号を書いておいた。自信のない問題は全部で11個溜まってしまった。間違えられるのは全部で10問。どうしよう。11個もわからないけどどうしよう。でも自信のない問題が全部間違えているとも限らないし大丈夫!大丈夫だよ!私は試験の最後の最後まで自分を鼓舞して試験を終えた。

試験終了後はまた待合室で待機をし、合格発表を待った。待つこと数分、合格発表のアナウンスが流れた。受験番号2番と3番の男性2人は合格、受験番号1番の私は不合格との結果が提示された。落ちた。私は思わず立ち上がって周りを見渡した。すると受験番号2番と3番がこちらを向いてニヤニヤしていた。「膝掛けまで持参していたくせにあの人は落ちた」私にはわかる、声を発してはいなかったが彼らの目がそう訴えていた。いてもたってもいられなくなった私は「あの落ちてしまったのですが!」と教習所の受付に駆けこんだ。

フラフラしながら教習所を後にした。そのへんにいた送迎の運転手のおじさんにも「あの落ちてしまったのですが!」と落ちてしまった胸の内を打ち明けた。おじさんからは満点様をしっかりやって次頑張りなさいと激励をいただいた。

自宅に帰宅後。有給をとって応援してくれた夫に試験に落ちてしまったことを伝えるのはとても心苦しかったが、夫は私の報告に対してベストを尽くしたならしょうがないと励ましてくれた。夫の優しさに感謝すると同時に11問も自信のない問題があってこれはダメかもしれないと思ったと試験当時の心境を報告すると、10問だろうが11問だろうが間違えられるのは5問だから。と想定外のことを言われて驚いてしまった。間違えられるのはたった5問という事実を知り、改めて仮免の難しさを思い知り次こそ合格できるように満点様をやり込もうと心に誓ったのだった。