はじめての妊婦

妊娠して8カ月が過ぎた。小さい頃は20歳になったらお嫁さんになって女の子を産んでという人生計画を立てていたが、それから10年経ってもその予定は訪れず、結婚をしない生活をぼんやり考え始めた頃にあれよあれよと言う間に結婚・妊娠そしてあとフタツキもすれば子供のいる生活が始まる。

妊娠をしてまず驚いたのは優先席に立っていても席を譲られないということであった。紋所のようにマタニティーマークを見せつけてもダメである。悪阻もなく腰痛もなく元気だから私はいいのだが「世の中ってそうなんだな」とさみしい気持ちになった。私の感覚では8割の人は席を譲らない。特におっさんはダメ譲らない。妊婦を見かけたら声をかけてあげてほしい。心底具合の悪い人もたくさんいるから。それくらい余裕のある社会であってほしい。

それと最近ようやっと我が子の性別がだいたい判明した。いつも下を向いていたりとなかなか超音波で確認ができず、もどかしい日々が続いていたのだがこの間の検診でやっと見せてくれたのだった。

「突起物が確認できますね、おそらくペニスでしょう。しかしタマが見当たりません」

「...そうですか!」

「棒状の、この部分がペニスだと思うんですけど、タマがない」

「...そうですか!」

「多分男の子でしょう。タマが見えませんが」

「そうですか!」

「でもわかりませんよ!クリトリスのでかい子もいますからね!それがペニスのように見えることもありますから」

「...そうですか!」

その後、速やかにお腹をしまい先生に挨拶をして産婦人科を後にしたが意味がわからなかった。先生の前ではそうですか!としか言うことができなかったが内心「???」であった。タマが見当たらないはまぁわかるがクリトリスのでかい子ってなんだろう。私は女性だけどイメージが湧かなかった。うちの子は大丈夫なんだろうか。私は腹をさすりながらどんな子でも大事に育てるからねとお腹の子と約束をした。

また妊娠出産同様初めて体験する一大イベントが産休である。労働は私にとって切っても切り離すことができないもので、高校に入学する前の春休みからアルバイトを始め、それからほぼずっと労働をしている。社会人になった20歳からも休職することなく、有給もろくに使わず働いた。そうしてこの度ようやく1年間の産休を獲得し、賃労働者から足を洗い一息つくことができるのだ。嬉しい。今から何をしようとワクワクしている。できることなら海外旅行でもしてのんびり過ごしたいのだがなんてったって私は臨月。無茶をすることはできない。その代わりサンドイッチ屋でアルバイトをすることが決まった。青学のすぐそばの小さなサンドイッチ屋だ。週1で1時間だけ交通費は出ないが、まかないで美味しいサンドイッチが食べられるらしい。楽しみだ。なんで労働からやっと離れたのにまた労働することにしたのかは 勢い としか言いようがないが、無理のない範囲で頑張ろうと思う。

あとやりたいと思っていることは今のところ「蒸しパン作り」である。蒸しパン作りは8ヶ月の子供を持つ友人とお茶をした時に、友人が子供に手作りの蒸しパンを食べさせている姿を見て感動し、友人から蒸しパン作りのアドバイスをもらったのだ。蒸し器がないとだめかなと少々ハードル高く考えていた蒸しパンだったが蒸し器がなくてもフライパンや鍋で蒸せることが判明。蒸し台という物があってそれがあれば蒸しパンができるのだ。目からウロコ。蒸し台をAmazonで調べてみたところ600円くらいで売っていた。600円で夢が買える。素晴らしい。すぐさま購入。こうして我が家に蒸し台がやってきた。まだ蒸しパンは作っていないがかぼちゃを蒸してみたらすごく美味しかった。レンジで蒸すよりムラなく蒸せて味も良い。どうも100圴でも売っているようなので私も蒸しパン作りたいわと言う人がいれば是非とも蒸し台を購入してほしい。産休に入ったら蒸しパンを作ってまずは一向に私に懐いてくれない実家のチワワにあげたい。それで仲良くなれたらいいなと思っている。

あとは厄払いしたいとか掃除したいとか煮豚作りたいとか天井が高くて客と客の間がしっかり空いているカフェでシフォンケーキを食べながらだらだらブログを書きたいとか色々あるが「あなたの出産予定日だと産休入ってからすぐに保育園の見学に行った方がいいですよ」とつい最近赤ちゃん教室で忠告を受けてしまいダラダラのんびりましてやサンドイッチ屋でバイトなんてしている場合ではないことに今さら気がつき焦りを感じているのであった。

とにかくお腹の子に迷惑がかからないよう健やかに残りのマタニティーライフを過ごしていきたいと思う。